「で、お前は結局なんの仕事してたんだ?」
「あ、やっとまともに聞いてくれる気になった?」
ハクイとの会話の中
ようやく生まれたまともそうな質問
「ペコラはねぇ~まず、部署みたいなものはあったんだけど、人数が少ないから部署は変だねって話になって、班分けをしてたんだよね」
「…小学生かよ」
「いや、1班とかじゃなくてね?ペコラはまず現地班だったのよ」
「なんだソレ」
「輸入食品を扱ってたんだけど、いろんな国へ行って、輸入する食品を選んで、値段とか交渉して、最初は数をそんなに買わなかったから送料浮かせるために、なるべく持って帰る仕事だね」
「おぉ、なんかやっとまともっぽいな」
「大変だったんだよ~英語ほとんどしゃべれなかったし、イタリア語とかフランス語とかなんてわかるわけもないしで」
「…何でその語学力でお前は現地班とかになってるんだよ」
「その班、色々訳アリっぽくて志願者が基本いないから新米が担当するみたいでね?」
「ただでさえ訳アリなのに、それ以上どう訳アリになれるんだよ」
「あ、聞きたい?」
「…いや、今はいいわ」
「あ、そう?それ以外にペコラは営業班だったのよ、これはセイソ先輩と一緒。あ、現地班はペコラ1人ね」
「お前、海外なんかそれまで行った事ねーよな?」
「うん、だからパスポート作る時、本当に感動したんだよねぇ…うんうん、値段高くて青い方にしたけど」
「よくそんな初心者に行かせるな。で、営業ってなんだよ?」
「その輸入食品をお店で使ってもらうための営業活動だよ。元々、セイソ先輩はリクルートって会社で働いてたみたいなんだけどね、その時の営業先とかの人にも回ってってたよ」
「何でその先輩は、大手からそんなゴミ屋敷で働きだしたんだろうなぁ」
「ベンチャーの未来にかけてみたかったんじゃないかな?輸入食品扱ってるようなお店に営業をしに行くって感じだったよ。で、もう一つはペコラはまかない班」
「…なんか一気に、庶民的になったな」
「いやいやいや、重要なんだよ?まかない班はもともとAKB先輩がやってたんだよね?」
「あぁ、それも新米がやるんだよなぁ?」
「そうそう、ただAKB先輩は料理嫌い…だったのかな?基本カップラーメン、焼きそば用のお湯を沸かす係でね。輸入食品の在庫とかも使ってよかったんだけど、缶あけて、そのまま…みたいな感じで」
「せめて野菜くらい食えって話だな。まぁ逆にその食事ならキッチン汚れねーだろ」
「いやぁ…それがそのままのカップラーメンとかの残骸が部屋中にあってさ」
「ゴミ屋敷の原点か」
「缶とかも開けっ放しで何か月か放置されてるであろう状態のものが台所に散乱しててね、まずは掃除とゴミ分けと、消毒からスタートだったんだよね、懐かしい」
「マジか」
「ただ、人数が足りなかったんだと思うんだよねぇ~うんうん」
「それがお前の仕事かよ?」
「あとは、美魔女社長の家だから、いやセイソ先輩とか、AKB先輩の私物も結構あったんだけど、全体の家事担当もしてたよ、最終面接のあと変なスイッチ入っちゃってさぁ…了承を得てから台所と洗濯をしてたんだよ」
「会社で洗濯………なんでそうなったか詳細聞きてぇような聞きたくねぇような」
「ベランダに行くのがなかなか大変で、掃除しながらだったんだけど、その日は人生初の朝帰りしちゃったもんね、へへ」
「えらく夢もロマンもねぇ朝帰りだな」
「で、お母さんに会社に泊まり込みますって連絡はしてたんだけど、あ、だからそれインターン初日なのかな?まだ大学生の時だったから」
「お、おう」
「お母さん、まさか恋人と外泊か?!とか思ってたらしいんだけど、帰ってきたペコラが異臭とくたびれた姿で、尚且つそのまま家にある掃除道具貸してとか言うから、直感でーあぁ、ダメだこりゃーって思ったらしくてね?」
「まぁ…21歳で朝帰りっつうと、そうだよなぁ。まさか娘がゴミ屋敷の掃除しててそうなったとは思わねぇよな」
「そんなこんななスタートだったよ」
「お前、ゴミ出しって今オットーにしてもらってるじゃん?よくそん時できたよな」
「あぁ…それがさ?マンションって各フロアにゴミ捨て場があるもんなのかな?しかも24時間いつ捨ててもよくてね?!あれならできるよ…全部に屋根あるし…マンションすごいわ~って感動したんだよね」
そんなペコラの仕事は約2年間続きましたとさ